ご案内
「英語人間」とは、英語をかじったために、いろいろな疑問や不安の縛りにあって悩む日本人のことです。
恐れを抱いてしまったり、1日あきらめてまたはじめたり、自分のやっていることが本当に会話になっているのか心配だったり、発音はどこまでやればいいのかわからなかったり、海外旅行をしても買った物だけが得たものであったり。
不安や悩みは多いものです。
その原因は、日本語のほかに英語という外国語を話そうと努力していること、つまり、2つの重いスーツケースを持って旅をしようとがんばるからです。
この本は、そうした旅にこれから出る人や、もう何度も出ている人に、いわば安定したフットワークを学んでいくためのものです。
具体的には、7つのヒントを提供します。
まずヒントその1で、英会話で自分をどう呼んでもらい、相手をどう呼ぶか。
ヒントその2では、英語の小さなやりとりの中にある英語文化ならではの水平感を体験します。
ヒントその3では、本当に会話しているのかどうかをチェックし、コツと心構えを学んでいきましょう。
ヒントその4では、英語も日本語同様どこかで演じているものであることを発見します。
心を声や体でどう表すか、を学びましょう。
ヒントその5では、英語を話すときに必要なことばと心のマナーといったもの、その奥にある理由を考えてみましょう。
ヒントその6では、ユーモアのセンスとは本当はどんなものなのかを実例つきで体得していきましょう。
ヒントその7では、発音や文法について不安な部分の解消に努めます。
僕自身、日本に生まれ育ち、英語を教え、話す仕事をしながらも、ああでもない、こうでもないと、不安と懐疑と思いこみのバブルになっておりました。
大変遅まきではありますが、お歳で初めてアメリカという外国へ向かって、ふわふわと太平洋を渡っていきました。
そこで見たものは、日本の先輩、後輩のタテ社会とはまるで違う、水平感にあふれた人間関係の世界。
「語」でなく、水平感のある英会話を目指す「話学」のコンセプトが生まれたのもそのときです。
この本は「話学」からの7つのヒントだと考えて下さい。
ただ、もうこの男は「英語人間」を脱しているのかな、と思われるなら、早計というものです。
いまだに「健康チェック型英語人間」や「サムライ型英語人間」、「日本人度測定英語人間」など、思わぬときに顔を出し、襟を正すことがあります。
家庭では、妻とは英語、娘とは日本語という、綱渡りのような言語生活を送る身ゆえ、これまた、異文化交流のタイトロープを踏み外すことも少なくありません。
ですから、この本は、僕自身のミスやエラーの集積でもあります。
それに関する思いや発見、アドバイスを綴った書でもあります。
どうか大いに、考えながら、本の7からなるヒントをお読みください。
基礎的な英語がいかに大切かということを、「話学」の観点から再確認していただけるなら、望外の喜びです。
「英語人間」、特に「日本男児英語人間」は、個人名で呼ばれることに強い拒否反応を示します。
米国の工場の管理を任された実力派の技術者Dさんから聞いた話ですが、職員との顔合わせも済んだある日、大工場の廊下を歩いていると、陽気な調子で自分の名(仮に K とします)を呼ぶ声がしたそうです。
びっくりして声のした方向を見ると、現地の現場主がニコニコしながら歩き去っていくところで、Dさんはそのときのショックと怒りで、相当期間、落ちこみが続いたそうです。
よくわかります。
そういう僕も、外国へ行くこともなくすごしたせいでしょうか、社会に出て英語を使う仕事を続けていても、できれば個人名では呼ばれたくない、照れくさいし、軽く見られているようでもあるし、という気持ちがありました。
ましてやDさんは、部長、D 様、あるいはD君としか呼ばれたことのないパリパリの日本人トップです。
学校時代からずっと先輩、後輩のタテ社会の中で生きてきた日本男児で、「ハーイ、カズ!」と挨拶されたのですから、そのショックは察して余りあるものがあります。
彼がその後しばらく、工場長室に引きこもりがちであったという話もうなずけるものでした。
ただ、親愛の気持ちを表すときに個人名で呼びかけるという風土をまったく知らなかったことは残念なことでした。
このあたりの知識のあるなしで、英語でのやりとり、英語圏でのフットワークは、ずいぶん違ってくるからです。
同じ新天地で見事にヒット、いやホームランをかっ飛ばした日本人トップがいます。
I 選手です。
米大リーグで活躍する I 選手の名は、すでにハウスホールド・ネーム(家庭で話題に上るほど誰でも知っている名前)になりました。
ひとえに I 選手の実力によるものなのですが、彼が名人なのは野球だけではありません。
彼が、 I と呼ばれて怒らないこと、逆にそう呼んでほしいと自ら世の中に呼びかけていること、この姿勢がまず日本でヒットし、それまでの野球の伝統を変えました。
S! とは呼べない偉人たちの野球道とは違う、みんなでわいわい楽しく少年野球をしているような「 I 」という名。
部活からはじまる複雑な先輩、後輩世界を感じさせない、威張らない、きわやかな水平感のある個人名の選手 I が、例年ごろからメキメキ日本の野球を面白くしていったのです。
2001年、彼は、アメリカ合衆国という英語国に、入っていったのです。
この気安さは、「サムライ昧」ともいうべき堅苦しきで「定評」のあった先達の日本のプレーヤーたち、ひいては日本人のイメージに、重要な変化をもたらしています。
チューインガムこそ噛んではいませんが、彼が他の選手と水平にフレンドリーにつきあいながらボールで躍動する姿、英語で語りあうその姿は、我々日本人の心にある異文化恐怖のバリアーを、ひょいと取り外さんばかりの効果さえもたらしています。
料理など趣味の番組の「先生」、これも司会は「マーサ?」などと個人名で呼びかけます。
クイズ番組の出場者も個人名で司会者とやりとりします。
野球をはじめスポーツ番組のコメンテーターの2人、これまた互いを個人名で呼びあいます。
家庭でも兄弟姉妹は互いを個人名で呼びあいます。
ちなみに、英語では Y (私の兄弟の J)とはいいますが、彼が兄なのか弟なのかは、伝えようともしなければ気にもしないのが普通です。
日本語に翻訳する仕事をする人の大きな頭痛のタネとなっているのですが、実は英語文化の水平感を表す例でもあるのです。
もちろん教師と生徒、上司と部下、親と子など、個人名で互いを呼びあうことには注意しますが、12分にあり得るのが英語社会なのです。
英語の日常会話ではこの順番(個人名、家名)が常識です。
逆に日本では家名が先にきます。
いわば個人名尊重主義と家名尊重主義の違いです。
ファーストネームを前に押し出す日本人のファーストバッター、「 I 式」を参考にすれば、英会話という新天地により早く親しめるのではないでしょうか。
「 I 式」と、ファーストネーム文化については納得できる。
自分は「 I 」というより、「 S さん」のタイプ。
これで何とか英語圏を渡れないだろうか。
こういう方も必ずやいらっしゃるはずです。
そういう方のための方法があり、心に、広く使われているので紹介しておきます。
やり方は簡単。
相手があなたをEと呼び、あなたも相手をZと呼ぶという、水平な世界です。
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